介護施設での消防設備緊急点検対応報告

千葉県内の介護施設での消防設備緊急点検対応報告

千葉県内にあるグループホーム(介護施設)から緊急点検の依頼を受け、消防設備一式の確認と対応を行いました。

連絡を受けた当初は、グループホーム 給湯器点検の事例かと思われました。

しかし現場で詳しく調査した結果、実際には給湯設備ではなく消防設備に問題が潜んでいることが判明しました。

この記事では、介護施設 点検対応の現場事例として、火災受信機の送受話器紛失への対処やスプリンクラー設備点検における信号表示の確認など、プロの視点で具体的な手順と工夫を解説します。

介護施設やグループホームで設備管理に携わる施設管理者の方にとって、実務に役立つ施工報告事例となるでしょう。

現場概要と緊急対応の背景

依頼を受けたのは千葉県内の介護サービス会社が運営するグループホーム(地上2階建て)です。

施設の担当者から「消防設備の一部に不具合があるようだ」と緊急の相談が入りました。

現地に急行して状況を確認したところ、主に次の2点の指摘事項が判明しました。

  1. 火災受信機の送受話器(通話用ハンドセット)の紛失
    – 受信機(火災報知設備の制御盤)を開けると、本来備え付けられているはずの送受話器が見当たらない状態でした。
    前回の点検時には確かに存在していたとのことですが、今回は紛失していました。

  2. スプリンクラー異常時の信号表示に関する疑問
      – 「スプリンクラーに異常が生じた場合、どの表示灯が点灯して知らせるのか分からない。
    受信機の表示項目にそれらしき表示が無いように見える」と指摘を受けました。
    消防設備の専門知識がない施設担当者からすると、スプリンクラーの異常警報が確認できないのは不安要素です。

初動として、上記の問題点が実際に設備上の不具合なのか、あるいは運用や仕様上の問題なのかを判断する必要がありました。

現場に到着後、速やかに設備の状況把握と原因究明に取り掛かりました。

指摘事項1: 火災受信機の送受話器紛失への対応

現場の火災受信機(自動火災報知設備のコントロールパネル)を点検したところ、案の定、送受話器が所定の位置にありませんでした。

通常、受信機内部には非常時に消防署や館内と連絡を取るためのハンドセット(送話・受話器)が収納されています。

この送受話器は火災時の館内通報や消防隊との連絡に欠かせない重要機器です。

 

現場での確認: 前回点検を担当した協力会社からの情報では、送受話器は受信機本体ではなく近くの埋め込みボックス内に保管されていた可能性があるとのことでした。

そこで受信機周辺の壁面を調査したところ、写真で赤丸を付けて示された埋込ボックスの場所を特定できました。

しかし、実際にボックスを開けてみると、中は空で送受話器は見当たりません。

 

紛失の可能性: 施設の職員の方にも状況を伺いましたが、「送受話器がどこにあるか見当がつかない」との返答でした。

防災用品と一緒に保管している可能性も考えられましたが、隣接する防災倉庫や事務所内を確認しても該当する電話機は発見できませんでした。

このことから、残念ながら送受話器は紛失している可能性が高いと判断しました。

原因として考えられるのは、過去の点検や工事の際に取り外されたまま行方が分からなくなった、あるいは誤って廃棄・紛失してしまったなどが挙げられます。

 

対応と提案: 送受話器が無い状態では万一の火災時に支障を来す恐れがあります。

そこで施設管理者様には、至急代替の送受話器(適合品)を手配して再設置することを提案しました。

通常2台セットで設置されるものが両方とも無くなっているため、少なくとも2台の交換が必要です。

幸い、受信機自体の他の機能(火災感知や警報鳴動)は正常に動作していることを機器テストで確認済みですので、送受話器の再設置さえ行えばシステムは本来の性能を回復します。

現場の視点では、こうした部品の紛失は意外と起こり得るトラブルであり、普段から点検時に付属品の有無をチェックし、保管場所が適切かどうか確認しておくことが重要だと改めて感じました。

指摘事項2: スプリンクラー設備の信号表示確認と対応

次に、スプリンクラー設備に関連する指摘についてです。

担当者からの質問は「スプリンクラーで異常(例えば作動や故障)が起きた時、この施設ではどこに異常表示や警報が出るのか?」というものでした。

受信機のパネルを見た限り、スプリンクラーに対応する表示ランプが無いように思われるとのことでした。

この点検依頼前に別の点検業者が指摘していたらしく、施設側も不安に感じていたようです。

設備仕様の確認: 現地のスプリンクラー設備を詳しく調べると、このグループホームには屋外に設置された受水槽(貯水タンク)加圧ポンプが存在するタイプのスプリンクラー設備でした。

一般的に、大きな建物ではスプリンクラーの水源として受水槽とポンプを備え、火災時にはポンプで加圧して放水します。

このような受水槽・加圧ポンプ式の場合、火災受信機とは別にスプリンクラー用の警報盤や水流検知装置が設置され、スプリンクラーが作動すると警報盤に信号が表示されるのが通常です。

しかし、本件の現場では受信機にスプリンクラー作動を示すランプや表示が無いことから、「もしかするとこの設備は特定施設水道連結型スプリンクラーではないか?」と推測しました。

特定施設水道連結型とは、小規模な福祉施設などで認められる簡易スプリンクラー方式で、水道本管に直接接続し専用ポンプを持たないタイプです【参考:消防法施行令 第26条等】。

この方式では、通常のスプリンクラー設備と異なり火災受信機に連動した発報信号(スプリンクラー作動表示)を出す必要がない場合があります。

そのため、受信機にスプリンクラー用の表示灯が無い設計もあり得ます。

協力会社との情報共有: 当社はこの疑問を解消すべく、過去に本施設の消防設備設置工事を担当した協力会社にもヒアリングを行いました。

担当者の話によると、当時の設置工事では水道圧力が若干不足しており、念のため加圧ポンプを設置した経緯があったそうです。

しかし消防署との協議の結果、「このスプリンクラー設備は水道連結型(特定施設向け)として扱い、発報信号は不要」という取り決めで進めたとのことでした。

つまり、ポンプは付いているものの運用上は直結式とみなし、スプリンクラーが動作しても火災受信機側には信号を送らない仕様となっていたのです。

これはかなり特殊なケースで、当時消防署の予防課とも詳細に相談し、了解を得ていたとのことでした(残念ながら当時の書面や担当者名は残っていませんでしたが、口頭の証言で判明しました)。

 

消防署への再確認: 念のため、今回の点検に際し改めて所轄の消防署(予防課)にもこの件を確認してもらいました。

その結果、「当該グループホームのスプリンクラー設備については、消防法上、発報信号の設備は不要である」と公式に回答をいただきました。

つまり、受信機にスプリンクラー用の表示ランプが無いのは設計上の問題ではなく、ルール上問題ないとの最終確認が取れたわけです。

この回答を受け、私たちも胸をなでおろしました。

現場目線では、「受信機に表示が無い=不備」と早合点しがちですが、背景にはこうした特例的な運用があり得ることを学ぶ機会ともなりました。

 

対応と結果: スプリンクラー設備の異常表示に関する懸念は、消防当局のお墨付きにより問題なしと判断されました。

私たちは当初の点検報告書でこの点を「不良(要是正)」と記載していましたが、今回の確認結果を踏まえて訂正済みの点検報告書を施設管理者様へ提出しました。これで施設側も安心していただけたと思います。

併せて、万一スプリンクラーが動作した場合でも、適切に散水・消火が行われること、および消防機関へは自動火災報知設備経由で火災通報がなされるため安全上問題ないことを説明しました。

現場の経験として、消防設備の設計意図を正しく把握し、必要に応じて行政機関と連携することの大切さを改めて実感しました。

その他の点検結果と追加提案

今回の緊急対応では、上記の主要な2点の他にも消防設備全般の点検を行いました。その中で判明した事項や、施設管理者への提案事項を以下にまとめます。

  • 消火器の使用期限:
    点検した消火器は製造年が2016年であり、すでに設置後9年が経過していました。
    一般に蓄圧式消火器は製造から5年を過ぎると内部試験及び放射試験が必要です。
    点検費用が新品購入より高くつくケースも多いため、当社では製造後6〜7年を経過した消火器は本体交換を推奨しています。
    本施設の消火器についても老朽化が見られるため、早めの交換を提案しました。
    実務的には、新しい消火器に更新することで安全性を確保できるだけでなく、点検コストの削減にもつながります。

  • 他設備の正常動作確認:
      自動火災報知設備(火災受信機本体)、消防機関へ自動通報する装置(通報盤)、非常照明・誘導灯などについても総合点検を実施しました。
    結果、送受話器紛失以外には特段の異常は見受けられず、各設備は良好な状態であることが確認できました。
    非常ベルの音量や誘導灯の明るさなども規定通りで、入居者が多い介護施設の現場として必要な安全水準は維持されていました。

  • 今後へのアドバイス:
      施設管理者の方には、今回の事例を踏まえ、定期点検の重要性を改めてお伝えしました。
    とくに人命に直結する消防設備は、半年~1年ごとの専門業者による点検が法令で義務付けられています。
    異常の早期発見と是正により、入居者の安全を守り安心して暮らせる環境を維持できます。
    また、点検結果について不明点があれば遠慮なく質問し、仕様上の疑問は専門家や消防署に確認することも大切です。
    現場で培った経験からも、施設側と点検業者が密にコミュニケーションを取ることで、防災設備の万全な維持管理が実現すると感じています。

まとめと所感

本記事では、千葉県内のグループホーム(介護施設)における消防設備の緊急点検対応事例を、現場の視点から詳しく解説しました。

火災受信機の送受話器紛失への対処や、スプリンクラー設備の発報信号表示に関する特殊なケースの検証など、実務的な対応プロセスをご紹介しています。

介護施設のように高齢者が生活する場では、消防設備の確実な作動と適切な維持管理がとりわけ重要です。

 

今回の対応を通じて、プロの業者が施工した報告書・手順書風の形式で記録を残すことで、施設側との情報共有が円滑になることも再認識しました。

施設管理者の皆様にとって、本事例が今後の設備点検・管理の参考になれば幸いです。

緊急対応から定期点検まで、私たち専門業者は現場の視点と豊富な経験を活かし、安心・安全な施設運営に貢献してまいります。

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