高齢者施設個室のクロス張り替え施工実績
先日、高齢者施設の個人寝室において、壁紙(クロス)の張り替え工事を行いました。長年の使用によって汚れや傷みが目立っていた壁紙を新しくするための施工です。今回は、現場のプロの目線から、作業工程や現場で工夫した点を交えながら施工の様子を報告します。壁紙リフォームを検討している方や、施工の裏側に興味がある方の参考になれば幸いです。
施工概要
- 施工場所: 市内の老人ホーム内の個人寝室(居室)
- 部屋の規模: 約6畳(約10㎡)程度のワンルーム
- 施工内容: 部屋内の壁4面の壁紙クロス張り替え(既存クロス撤去、新規クロス貼り付け)
- 施工期間・人員: 1日(作業スタッフ2名で対応)
- 施工目的: 長年の使用による汚れ・キズのリフレッシュ、および新しい入居者様を迎えるための原状回復
- 特記事項: 作業前にベッド等の家具を移動・養生。壁面には手すりやナースコール機器が設置されていたため、取り外しと再取付けを実施。
使用材料
- 壁紙: 国産メーカー製のビニールクロスを採用。施設の雰囲気になじむアイボリー系の無地デザインで、汚れ防止コート・抗菌機能付きの壁紙です。
- 接着剤: 壁紙施工用の業務用接着糊を使用。施工中の臭いが少ない低臭タイプで、乾燥後は強力に接着します(防カビ剤配合)。
- 下地処理材: 下地強化剤(シーラー)および壁面補修用パテを併用。古いクロスを剥がした後の下地を安定させ、凹凸を平滑に整えるための材料です。
作業手順
現場での主な作業手順を順を追ってご紹介します。
- 養生と準備: まず、作業箇所以外を汚さないよう養生を行います。室内のベッドや家具を移動し、床全面にビニールシートを敷きました。また、壁に取り付けられた手すりやナースコールのスイッチ、カーテンレールなどの備品も事前に取り外しておきます。
- 既存クロスの撤去: 古い壁紙を壁から剥がしていきます。壁紙は表面と裏紙の二層構造なので、まず表面のビニール層を引っ張って剥がし、残った紙層は霧吹きで湿らせて柔らかくしてから丁寧に除去しました。こうすることで下地ボードへのダメージや粉塵の飛散を抑えられます。
- 下地の点検・補修: 壁紙を剥がした後の下地を確認します。古い糊が壁に残っている部分はスクレーパー(ヘラ)で丁寧に削り落とし、小さな穴や段差にはパテ(下地補修材)を塗って平滑に補修しました。また、下地が脆くなって粉を吹いてしまっている箇所には、シーラーと呼ばれる下地処理剤を塗布して下地を強化しています。
- 新しいクロスの採寸・裁断: 新しく貼る壁紙を壁面の寸法に合わせてカットします。天井高さより少し長めに壁紙を裁断し、貼り付け後に上下の余分をきれいに切り落とせるよう準備しました。今回は無地のクロスでしたが、柄物の場合は隣り合うクロスの模様が合う位置を計算して裁断します。
- 壁紙への糊付け: 壁紙の裏面に接着剤(糊)を塗布します。専用の糊付け機やローラーを用いて、ムラなく均一に糊を付けました。糊を付けたクロスはすぐに貼らず、5~10分程度寝かせて馴染ませます(この待ち時間をオープンタイムと呼びます)。
- 新しいクロスの貼り付け: 天井の隅から順番に、糊付けしたクロスを壁に貼っていきます。空気が入らないようヘラで押さえながら、慎重に貼り進めました。継ぎ目(ジョイント)はクロス同士をぴったりと突き付け、重なりや隙間ができないよう調整します。2枚目以降も同様の手順で、部屋四方の壁を次々と仕上げました。
- 端部の仕上げ・器具の復旧: クロス貼りが一通り完了したら、天井や床の端部で余っている壁紙をカッターできれいに切り落とします。コンセントやスイッチ類も、一旦外してあったプレート周辺にクロスを貼り込み、開口部をくり抜いてから元通りにプレートを取り付けました。また、取り外していた手すりやナースコール機器類も、壁紙の上から確実に再固定しています。
- 清掃と最終確認: 最後に、養生材をすべて撤去し室内を清掃します。剥がした古い壁紙の破片や飛び散った糊をきれいに片付け、床や家具の表面を拭き掃除しました。併せて新しく貼った壁紙全体を目視でチェックし、継ぎ目の浮きや糊の拭き残しがないか最終確認します。問題がないことを確認して、施工完了です。
作業中の様子: 古い壁紙を剥がして下地を露出させた状態です。灰色の石膏ボードがむき出しになっており、一見すると壁全体がまだら模様に見えます。ここから残った糊をきれいに除去し、凹凸をパテで埋めて平滑に整える下地処理を行いました。
施工中の工夫
今回のクロス張り替え施工では、高齢者施設ならではの配慮や、スムーズに作業を進めるための工夫をいくつか行いました。以下に主なポイントを挙げます。
- 騒音・振動への配慮: 日中の作業でしたが、施設内の他の居室にできるだけ迷惑をかけないよう注意しました。古いクロスを剥がす際も、大きな音や振動が出ないよう慎重に進めています。また、作業時間も入居者様の生活リズム(食事や休憩時間帯)に配慮してスケジュールを組みました。
- ホコリ対策: クロス剥離や下地のサンディング作業では細かなホコリが発生します。空気環境への影響を抑えるため、粉塵が舞わないよう霧吹きで壁紙を湿らせながら剥がしました。さらに、作業中はこまめに掃除機をかけ、常に清潔な状態を保つよう努めています。
- 臭気への配慮: 接着剤や下地剤の臭いにも気を遣いました。施工中は窓を開放して十分に換気し、換気扇や空気清浄機も併用して室内に臭気がこもらないよう工夫しています。使用した糊も低臭タイプのものを選び、施工後もしばらく換気を続けて、化学物質の匂いをしっかりと追い出しました。
- 備品の丁寧な取扱い: 取り外した手すりや機器類のネジ・ボルトは紛失しないよう一箇所にまとめて管理しました。再取付け時にはネジの締め忘れがないようダブルチェックし、しっかりと固定しています。特に手すりは利用者の安全に関わる備品のため、確実な位置と強度で原状通り復旧しました。
- 仕上がり品質へのこだわり: クロスの継ぎ目が極力目立たないよう、貼り始める位置や順番にも工夫を凝らしました。例えば、窓からの光の当たり方を考慮し、光が差し込む方向へ順に貼ることで、ジョイント部分に影ができにくくしています。また、コーナー(壁の角)部分はクロスをしっかりと巻き込んで貼り付け、将来的に端が浮いてこないよう念入りに仕上げました。
仕上がりと所感
古い壁紙をすべて貼り替えたことで、室内は見違えるほど明るく清潔な印象になりました。壁紙一つで部屋の雰囲気がここまで変わることに、私たち自身も正直驚いています。施工後には施設スタッフの方から「部屋が明るくなったね」と笑顔でお声がけいただき、プロとして大変嬉しく思いました。作業を担当した職人としても、無事に工事を終えてほっとしています。
施工後の居室: クロス張り替え工事が完了した室内の様子です。汚れや傷があった壁も、真新しいクロスによって明るく清潔な印象に生まれ変わりました。窓から差し込む陽射しが壁に反射し、部屋全体が以前より広く感じられます。新しい壁紙の糊がしっかり乾くよう、この後もしばらく窓を開けて換気を行い、作業終了となりました。
今回、高齢者施設という現場での施工にあたり、いつも以上に細やかな配慮を心掛けました。作業を終えて改めて、居室の快適さや安全性を維持することの大切さを実感しています。新しい壁紙で生まれ変わったお部屋で、入居者様が気持ち良く過ごしていただければ、施工者としてこれ以上嬉しいことはありません。これからもご利用者様と施設スタッフの双方に喜ばれる質の高い施工を提供していきたいと思います。