高齢者施設での引き戸・ドア枠塗装補修実績

高齢者施設での引き戸・ドア枠塗装補修実績

都内の高齢者施設より、居室の引き戸とドア枠の塗装補修のご依頼をいただきました。施設内の扉は毎日の開閉や車椅子の接触で傷みやすいものです。実際、木目調の引き戸では手すり付近を中心に擦り傷や塗装の剥がれが目立っていました。また、ドア枠にも長年の使用による小さな欠けや色あせが各所に見られました。このままでは見た目の劣化だけでなく、ささくれによる怪我のリスクや施設全体の美観低下にもつながります。そこで施設担当者様から「安全面と美観を両立した補修をしたい」とのご相談があり、今回の施工に至りました。

施工対象の概要(引き戸・ドア枠)

施工対象は、居室出入口の引き戸とその周囲のドア枠です。引き戸は高齢者の利用を考慮したバリアフリー仕様の木目調建具で、表面には温かみのある木目柄の化粧シートが施され、手すり(縦型ハンドル)がしっかり固定されています。ドア枠も同様に木目調仕上げです。しかし、一部には車椅子や歩行器が当たった痕跡があり、表面の剥離や打痕が見られました。特に引き戸の手すり周辺は手で触れる機会が多く、塗装が擦れて艶がなくなっていたため、全体を補修して新品同様の状態に戻すことが今回の施工目標です。

使用材料と選定理由

塗料や補修材の選定にあたっては、高齢者施設の環境と安全性を最優先に考えました。まず塗料は、室内で生活されている入居者の方々に配慮し、低臭・低VOC(揮発性有機化合物)タイプの水性塗料を採用しています。水性塗料は乾燥が早く、塗装後のにおいも少ないため、施工中・施工後においても周囲への負担を軽減できます。また、抗菌性能のあるトップコート剤を用いることで、衛生面にも配慮しました。

補修部材には、木部専用のエポキシパテを使用しています。これは硬化後の強度が高く、下地材との密着性に優れるため、車椅子が当たる可能性のあるドア枠部分の欠けや凹みをしっかり埋めても剥がれにくい特徴があります。下塗り(プライマー)には、既存の化粧シートや木部にも適合する密着性の高い下塗り剤を選び、新旧塗膜の食いつきを良くすることで、仕上げ塗料が剥がれにくいよう工夫しています。

施工手順(養生、研磨、補修、下塗り、塗装、仕上げ)

実際の施工は、以下の手順で丁寧に進めました。

  1. 養生: 施工箇所周辺の床や壁、手すり部分を保護するため、ビニールシートやマスキングテープでしっかり養生しました。高齢者施設という環境上、塗料が他の場所に飛散したり、入居者の生活空間を汚したりしないよう、徹底した養生を行っています。また、施工中に入居者の方が誤って近づかないよう、簡易的なパーテーションを設置し、安全確保にも配慮しました。
  2. 研磨(下地処理): 塗装が剥がれてザラついている部分や、小さな段差ができている箇所を中心に、紙やすりやサンダーで研磨しました。古い塗膜や汚れを丁寧に除去し、下地を平滑にならすことで、この後に行う塗装の密着性と仕上がりの美しさを高めます。特に手すり周辺の擦り傷部分は入念に磨き、触れても引っかかりがない滑らかな状態に整えました。
  3. 補修(パテ埋め): 研磨後、ドア枠の欠けや引き戸表面の凹みなど、深い傷が確認できた箇所にはエポキシパテを充填しました。パテを盛り付けた後、硬化を待ってから表面をヘラとサンドペーパーで平滑に整え、周囲の面と段差がないようにします。この際、木目調シートの模様が周囲にある部分では、後の塗装で違和感が出ないようエッジ部分をぼかすように研磨するなど、細心の注意を払いました。
  4. 下塗り: 塗装前に、下地処理を施した箇所と既存表面との密着性を高めるため、プライマー(下塗り剤)を塗布しました。今回は既存の木目調シートの上から塗装を行う部分もあるため、シート素材にも適合する下塗り剤を選んでいます。下塗り剤を薄く均一に塗り広げ、十分に乾燥させることで、この後塗る塗料がしっかりと付着し、長期間剥がれにくい土台を作りました。
  5. 塗装(上塗り): 下塗りが乾いたのを確認したら、選定した水性塗料で上塗りを行います。周囲の木目柄に合わせて色を調色し、扉と枠のそれぞれに違和感のないよう慎重に塗り重ねました。木目調の意匠を活かすため、一度に厚塗りせず薄く何度かに分けて塗装し、木目の凹凸や柄を埋めてしまわないよう配慮しています。刷毛やミニローラーを使い分け、細部までムラなく塗装しました。特に手すりの取り付け部分や枠のコーナーなどは塗り残しが起きやすいポイントなので、角度を変えながら十分に確認し、塗り漏れのないよう丁寧に仕上げています。
  6. 仕上げ(点検・清掃): 塗料が乾燥した後、養生を撤去し、手すりや金具類を元通りに取り付けました。最後に全体を点検し、色ムラや艶の不均一がないか、引き戸の開閉に支障がないかを確認します。塗装箇所以外に塗料の飛び散りがないこともチェックし、問題がなければ清掃を行って作業完了です。施工後、引き戸を実際に開閉してみたところ、スムーズに動作し、塗装が厚くなりすぎたことによる抵抗もありませんでした。

現場での所感

今回の施工では、高齢者施設ならではの現場環境への配慮と職人ならではの工夫が随所にありました。まず臭気対策として、塗料は低臭タイプを使ったとはいえ、施工中は十分な換気を行いました。窓を開け空気清浄機も併用し、入居者の方々に匂いのストレスがかからないよう気を配っています。また、作業中の音にも注意を払い、電動サンダーでの研磨は日中の限られた時間帯に手早く済ませるなど、施設の静穏な環境を乱さないよう工夫しました。

安全面では、スタッフ同士で声を掛け合い確認を徹底しました。例えば、塗装中に通路を使用する他の職員や利用者がいる場合は一時作業を中断し、安全を優先しています。床に養生シートを敷いている間も、転倒の危険がないようテープで端をしっかり固定し、高齢の入居者が足を引っ掛けないよう配慮しました。職人の目線から見ると、こうした細かな気遣いこそが施設内施工では重要だと改めて感じます。

作業を終えた職人の正直な感想として、「まるで新品の扉に生まれ変わったようだ」という達成感がありました。施工前は傷や退色が目立っていた引き戸ですが、補修と塗装により木目の風合いがよみがえり、自分の手で施設の雰囲気改善に貢献できたことを嬉しく思います。また、施設スタッフの方から「見違えるように綺麗になった」と笑顔で声を掛けていただき、職人冥利に尽きる瞬間でした。

施工後の変化

施工後のビフォーアフターでは、引き戸とドア枠の見違えるような変化がはっきりと分かります。施工前は擦り傷や塗装剥がれで表面が白っぽく荒れて見えていた木目調の引き戸も、補修後には艶やかな木目が蘇り、全体に統一感のある仕上がりとなりました。手すり周辺の塗装剥げも完全に補われ、木目柄と自然に馴染んでいます。ドア枠についても、欠けていた部分が綺麗に埋められ、色むらなく再塗装されたことで、新設時のようなフレッシュな印象を取り戻しました。

見た目の改善だけでなく、機能面でのメリットも得られました。塗装により表面が滑らかになったことで、引き戸の開閉時に引っかかりを感じることがなくなりました。また、塗膜が保護層となり、今後しばらくは傷や汚れが付きにくくなっています。これにより、日常的な清掃もしやすくなり、衛生面の向上にもつながります。施設スタッフの方からは「扉の動きがスムーズになり、利用者様も使いやすそうだ」と好評をいただいており、見た目と機能の両面で改善が実現できました。

まとめ

今回の塗装補修によって、高齢者施設の引き戸とドア枠が安全かつ美しく蘇りました。定期的なメンテナンスの意義について改めて感じたのは、施設全体の快適性や安全性を維持する上で、小さな補修を怠らないことの重要さです。扉や枠の傷みを早めに補修しておけば、利用者様が怪我をするリスクを低減できるだけでなく、ドア自体の寿命延長にもつながります。特に高齢者施設では、設備の不具合が入居者の生活の質に直結するため、計画的なメンテナンスと迅速な対応が不可欠です。

塗装補修はフルリフォームに比べて短期間かつ低コストで実施できるメリットがあります。施設運営に支障をきたさずに環境を整える手段として、今回のような補修工事は非常に有効だと感じました。私たち施工のプロとしても、定期的な点検と適切なタイミングでの補修提案を今後も心掛け、施設の皆様が安心して過ごせる空間づくりに貢献していきたいと思います。

ビフォーアフター

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