都内オフィスビルでのスプリンクラー設置工事 現場レポート
私たちはスプリンクラー設置を専門とする業者として、先日、都内のオフィスビルにおける消防用スプリンクラー設置工事を担当しました。ビル管理会社様から「防火・防災体制を強化したい」というご依頼を受け、各フロアに適切にスプリンクラーを配置する計画です。従業員の安全確保と万が一の火災拡大防止が目的です。本レポートでは、現場での実務経験に基づき、調査準備から施工、検査までの手順と工夫、そして感じたことをお伝えします。
現地調査・準備
まずは現地調査です。ビルの構造図面を確認しながら、各階のレイアウトや天井裏のスペース、既存の配管経路を細かくチェックしました。オフィスフロアの天井裏には空調ダクトや電気配線が所狭しと走っており、スプリンクラー設置に適した配管ルートを慎重に見極めました。天井点検口から内部を確認し、高さや障害物の位置を測定しました。狭い天井裏での作業が予想されたため、配管材の長さや工具の持ち込み方法など、事前に段取りを決めました。
次に、消防計画の確認と当局への対応です。施工前に所轄消防署への工事届出を提出し、計画内容を説明しました。これは法令上必要な手続きであり、オフィスやマンションでスプリンクラー設置を行う際には欠かせないステップです。また、ビル管理者様と打ち合わせし、作業日程や作業時間帯を調整しました。オフィスビルではテナントの業務に配慮し、騒音の出る作業は早朝か夜間に行う計画としています。また、高所用脚立や電動ドリル、防塵マスクなど必要な資材・工具も万全に準備しました。
配管工事
いよいよ配管工事の開始です。作業当日、まず床やデスクが汚れないように養生シートを敷き込み、天井のパネルを一部取り外しました。私たち施工チームは二手に分かれ、一方は床上で配管の加工・準備を行い、もう一方が天井裏に上がって取り付け作業を進めます。現場でよくある課題の一つは、天井裏の狭さです。実際、天井裏に体を半分入れての作業となり、配管と既存設備の隙間を縫うように管を通しました。懐中電灯で照らしながら、配管支持金具を天井構造に固定し、その上に配管を載せていきます。
今回は耐久性を考慮してスチール製の配管を使用しました。各配管の接続部にはシールテープを巻き、モンキーレンチで確実に締め込みます。ネジ継手の一本一本に気を配り、後々の漏水トラブルを防ぐよう丁寧に作業しました。また、長い直管はあらかじめ床上で必要な寸法に切断・ねじ切り加工し、部材を組み立ててから持ち上げて取り付けています。こうすることで、狭所での作業時間を短縮し、安全性も高められました。配管工事の最後には、各フロアのスプリンクラーヘッド設置箇所まで配管が延びているか、チーム全員でダブルチェックを実施しました。
スプリンクラー本体の設置
配管が所定の位置まで配り終わったら、いよいよスプリンクラー本体(ヘッド)の取り付けです。まず各ヘッドを設置する天井板に穴開け加工を行います。専用のホールソーを使って適切な直径の穴を空け、焦げ跡やバリが出ないよう慎重に切り抜きました。この穴あけ作業は位置精度が重要で、図面で決めた配置通りに施工しないと、放水範囲にムラができてしまいます。天井板に開けた穴にスプリンクラーヘッドを通し、配管と接続して固定します。天井面からヘッドが顔を出す高さも微調整し、見た目にも違和感がないよう揃えました。
今回使用したのは閉鎖型のスプリンクラーヘッドで、内部にガラス製の感熱球が入っています。施工中にこの感熱球を破損しないよう、ヘッドの取り付けには十分注意しました。各ヘッドには化粧プレート(エスカッション)も取り付け、仕上がりもきれいに整えます。オフィスの内装に溶け込むよう、天井の色に合わせたプレートを選定しました。全フロアのヘッド取り付けが完了した段階で、高さや向き、遮蔽物との距離など最終確認を行います。照明器具や空調吹出口との干渉がないか、現場で再度チェックし、必要ならヘッド位置を微調整しました。
水流テスト・動作確認
スプリンクラー本体まで問題なく設置できたら、最後に水流テストと動作確認を行いました。まず配管内部に異物が残っていないよう、一度流水によるフラッシングを実施しました。続いて耐圧試験として、配管に規定の水圧をかけて一定時間保持し、漏水がないか確認しました。緊張の瞬間でしたが、漏れがないことを確認でき、ホッとしました。
次に、実際の火災を想定した放水テストを実施しました。ビルの最上階に設置した試験用開放弁を操作し、意図的に配管内の水を噴出させました。遠い末端のヘッドから勢いよく放水され、水圧・水量が計画通りであることを測定しました。同時に、水流検知装置が作動してビルの火災報知設備と連動し、非常ベルが鳴動することも確認しました。テスト後は速やかに放水を停止し、排水作業を行って配管内の水を正常な状態に復旧しました。立ち会いに来ていた所轄消防署の検査担当者にも結果を報告し、設備が所定通り機能することを確認していただきました。
仕上げ・引き渡し
施工と試験がすべて完了した時点で、現場の仕上げと引き渡し準備に入りました。まず、取り外していた天井パネルを元通りに復旧し、周囲の汚れを拭き取りました。配管工事で開けた穴や壁の貫通部には耐火パテを充填して補修しました。露出配管には錆止め塗装を施し、消防設備である旨の表示も行いました。また、作業中に発生した埃やゴミを産業用掃除機できれいに清掃し、オフィスをできる限り施工前の状態に戻しました。
最後に、ビル管理者様への引き渡しを行いました。新たに設置したスプリンクラー設備の配置図や使用した機器の仕様書、試験結果の記録などの書類一式をまとめて提出しました。そして、設備の使い方や注意点について説明しました。以下の点をお伝えしました。
- ヘッドに誤って衝撃を与えないこと
- ヘッドに物を吊り下げないこと
- 定期点検を確実に行うこと
非常時の作動原理も説明し、安心して設備を管理していただけるよう努めました。引き渡しの際、管理会社の担当者様から感謝の言葉をいただき、私も大きなやりがいを感じました。
まとめ
今回のオフィスビルへのスプリンクラー設置工事は、入念な準備とチームの協力により無事完了しました。各工程の課題も経験と工夫で乗り越え、最終的にビル全体の防火性能を大きく向上させることができました。スプリンクラーは火災時に自動で初期消火を行い、人命を守る要となる設備です。スプリンクラー設置工事には専門知識と確かな施工技術が求められるため、信頼できるプロに任せることが重要だと改めて感じました。
近年はオフィスビルだけでなくマンションや商業施設でもスプリンクラー設置のニーズが高まり、法令で義務付けられるケースも増えています。今回のように専門のスプリンクラー設置業者が適切に工事を行えば、万が一の火災時にも被害を最小限に抑えることができます。実務経験に基づく現場目線の報告がお役に立てば幸いです。