都内雑居ビル5階でのL字型軽量鉄骨壁 間仕切り施工 実務報告
施工概要
施工場所:
東京都内 雑居ビル(7階建て)5階部分
施工内容:
軽量鉄骨壁(LGS)によるL字型間仕切り壁の新設(延長約5メートル)
使用部材:
軽量鉄骨フレーム(スタッド・ランナー材)、石膏ボード(12.5mm厚)、耐火塗料、サビ止め塗料、各種ビス・アンカー など
工事目的:
オフィス内空間の効率的なゾーニング(エリア区分)と防火性能向上
軽量鉄骨壁を採用した理由
今回、間仕切り施工に軽量鉄骨壁(LGS下地)を採用した主な理由は、以下のとおりです。
建物への負荷軽減:
5階部分への新設壁ということで、構造体への負担を最小限にする必要がありました。軽量鉄骨壁は名前の通り重量が軽く、従来のコンクリートブロックやレンガによる壁に比べ床への荷重が少ないため、上階での工事に最適です。また、建物の既存構造を傷めずに施工できる点も評価しました。
施工の迅速性と清潔さ:
軽量鉄骨下地と石膏ボードを用いた壁は、比較的短工期で施工可能です。資材は工場製品で規格化されており、現場での加工が少なく工事中の騒音や粉塵も抑えられます。雑居ビルという環境上、他フロアへの影響を最小限に留められる工法として有効でした。
耐火・安全性:
石膏ボード張りの軽量鉄骨壁は耐火性能が高く、防火区画にも適用可能です。今回のゾーニングにあたって、防火性能の向上もご依頼の目的に含まれていました。軽量鉄骨は不燃材であり、石膏ボードとの組み合わせで所定の耐火時間を確保できます。加えて耐火塗料を鉄骨下地に塗布することで、万一の火災時にも構造が一定時間保護され、安全性が高まります。
仕上がりの品質:
石膏ボード仕上げの壁は表面が平滑で美観に優れ、後工程の仕上げ(塗装やクロス貼り)がしやすい特徴があります。軽量鉄骨壁は構造的な精度も出しやすく、通り(真直度)や垂直を確保した高品質な間仕切り壁を作るのに適しています。
以上の理由から、「軽量鉄骨壁 間仕切り施工」が最適と判断され、本工事で採用いたしました。
施工手順と現場状況
1. 事前準備・墨出し
施工に先立ち、まず施工範囲の床・天井・既存壁面に墨出し(マーキング)を行いました。L字型壁の配置寸法を正確に出し、既存の柱や配管との干渉がないか確認します。また、作業箇所周辺に養生シートを張り、ほこりや塗料が他エリアに飛散しないよう保護しました。材料はエレベーターで5階まで搬入しましたが、長尺物のため搬入経路には十分配慮し、他のテナント様の動線も妨げないよう事前に調整しています。
2. 軽量鉄骨下地(LGS)の組立
まず壁の下地となる軽量鉄骨フレームを組み立てます。床と天井の所定位置にランナー材(横架材)をコンクリートビスとアンカーでしっかり固定しました。次にスタッド材(縦の骨組)を立て込みます。スタッドは天井高さに合わせてカットし、約45cm間隔で配置しました。
組立時には、レーザー墨出し器を使い各スタッドの垂直を確認しながら作業しています。これにより壁の通りと垂直精度を確保しました。
また、スタッドの取付けに際しては所定の位置にスペーサー(スタッド補強材)を挿入し、下地の剛性を高めています。スペーサーを入れることでスタッドの変形を防ぎ、石膏ボード張りの際の確実なビス留めとフラットな仕上がりにつなげています。
L字形状のコーナー部分では、スタッドを二重に入れるなど補強を入念に行いました。特にコーナーは構造上弱点になりやすいため、L字金具や補強材で剛性を持たせ、将来的なぐらつきが生じないよう配慮しています。
3. 鉄骨下地への塗装(耐火・防錆処理)
下地組み完了後、石膏ボードを張る前に耐火塗料とサビ止め塗料の塗布を行いました。まず、露出する軽量鉄骨部分や切断面に対して防錆処理を実施します。軽量鉄骨材自体はメッキ加工され錆びにくい仕様ですが、切断部や穴あけ部から錆が発生する可能性があるため、サビ止め塗料を塗って長期耐久性を高めました。
続いて、必要に応じて耐火性能を向上させるための塗装を行います。今回の間仕切り壁は床から天井まで全面にわたる区画壁となるため、防火区画としての性能確保が求められました。そのため、軽量鉄骨下地に膨張型の耐火塗料を吹き付け、一層の耐火性を付与しています。
耐火塗料は火災時の高温で発泡膨張し、鋼材を熱から保護する特殊な塗膜です。見た目には一般の下塗り塗装程度の薄い膜ですが、有事の際にはしっかりと構造を守ってくれます。
4. 石膏ボードの施工
下地と塗装処理が完了したら、石膏ボード(プラスターボード)を一枚一枚ビスで留め付けていきます。L字型壁の両面に順次ボードを張り、継ぎ目(ジョイント)部分はずらして貼ることで強度と気密性を高めました。ビス留めの際は、ビス頭が表面から沈みすぎず出っ張りもないよう慎重に施工し、ビスピッチ(打ち付け間隔)も約15〜20cm間隔で均等に設定しています。特に周辺部ではピッチを細かくしてボード縁のめくれ防止に配慮しました。
ボード張り完了後、継ぎ目にはファイバーテープを貼り、パテ処理にて平滑にならします。コーナー部分もコーナービートを入れて補強し、角が欠けにくいよう処理しました。最後に全面を細目のサンドペーパーで軽く研磨し、下地処理を整えています。
この状態で施主様と中間検査を行い、下地の出来栄えと配置がご要望通りか確認していただきました。
5. 仕上げと清掃
石膏ボード下地の施工後、依頼内容に沿って表面仕上げを行いました。今回は耐火性能を重視しつつ予算との兼ね合いもあり、不燃クロス仕上げをご提案し採用しています。ボード面に下地処理剤を塗布後、不燃認定品のビニルクロスを職人が丁寧に貼り付けました。クロス継ぎ目が目立たないようローラーで圧着し、美しく一体感のある壁面に仕上げています。仕上げ完了後、養生を撤去し、床や周囲の清掃を実施しました。工事で発生した細かな粉塵まで産業用掃除機で吸い取り、施工前よりもきれいな状態を目指して退去しております。
現場での工夫と判断ポイント
今回の軽量鉄骨壁 間仕切り施工では、現場ならではの工夫や臨機応変な判断も随所に求められました。
その中から主なポイントをいくつかご紹介します。
静音・防振への配慮:
雑居ビルという性質上、他のフロアやテナントへの影響を最小限に留める工夫が欠かせませんでした。コンクリートへのアンカー打設やボードビス打ちの際には、電動工具の防音カバーを使用し、作業時間もビルの規定に合わせ日中の限られた時間帯に集中させました。
振動ドリルによる騒音は床養生を緩衝材入りのものにすることで幾分軽減でき、入居者様からのクレームゼロで完了できた点は大きな成果です。
寸法誤差への対応:
既存建物ならではの課題として、床や天井のレベル差・寸法誤差がありました。墨出し時に床面が数ミリ単位で傾斜していることが判明したため、下地組立時にスタッド下端に薄い鋼製のプレートライナーを挟み、高さを微調整して水平を確保しました。
さらに、天井側もコンクリートスラブの一部に不陸(凸凹)が見つかったため、ランナー材とスラブの隙間に専用シムを入れて密着させています。こうした細かな調整が、壁全体の直角度と仕上がり精度の向上につながりました。
安全管理と共有スペースの確保:
5階までの資材搬入にはエレベーターを利用しましたが、大型パネルや長尺ものは階段も使用しました。他の階の入居者様と通路で鉢合わせしないよう、搬入出のタイミングはビル管理人様とも事前に打ち合わせて安全な動線を確保しました。
また作業エリアには関係者以外立ち入らないようカラーコーンとバーで簡易的に区画し、エレベーターホールなど共有部にも作業資材がはみ出さないよう心がけています。
印象に残った点・所感
施工を通じて印象的だったのは、空間が劇的に生まれ変わった点です。施工前は一続きだったフロアが、L字型の新設壁によって二つのスペースに明確に分割されました。完成後に現場を確認いただいたビル管理責任者様からは、「限られたスペースを有効活用でき、レイアウトの幅が広がった」とお喜びの声を頂戴しています。間仕切り壁一つでこれほど印象が変わることに、改めて内装工事の醍醐味を感じました。
また、現場作業の観点では職人チームの連携の良さが光りました。今回はL字壁ということで通常の直線壁より手間もかかりますが、ベテランと若手がペアとなり互いに確認し合いながら作業を進めた結果、当初予定より早く高精度な施工を完了することができました。
実際に現場を見学された管理者様から「手際の良さと仕上がりの美しさに感心した」とのコメントをいただけたことも、施工者冥利に尽きます。
最後に、耐火塗料の効果確認も印象に残っています。塗布箇所が発泡膨張する様子を試験用サンプルでお見せしたところ、ビル管理ご担当者様は「初めて見た」「万一の時も安心できる」と大変関心を寄せておられました。
施工者としても、防災意識の高まりに貢献できた点は誇りに感じるところです。
まとめ
以上、都内雑居ビル5階におけるL字型軽量鉄骨壁による間仕切り施工の実務報告となります。今回の工事では、空間の効率的なゾーニングという目的のもと、安全かつ迅速で高品質な施工に注力しました。その結果、構造に負担をかけず、見た目にも美しい間仕切り壁を実現し、ご依頼いただいたビル管理責任者様にもご満足いただける仕上がりとなりました。
本報告書が、今後同様の施工をご検討される際の参考になりましたら幸いです。引き続き、安全第一・品質第一で施工に取り組んでまいります。お読みいただきありがとうございました。