ふすま張替え施工事例:築40年木造住宅での実録レポート

ふすま張替え施工事例:築40年木造住宅での実録レポート

 

現場概要とお客様のご要望

東京都内の築40年になる木造住宅にて、和室のふすま張替え工事を行いました。長年の使用で襖紙は日焼けによる黄ばみや小さな破れが見られ、和室全体が暗い印象になっていました。施主であるご依頼主様はデザインに強いこだわりをお持ちで、和の雰囲気を保ちつつも現代的で明るい印象にしたいとのご要望でした。また、今回は押入れや部屋の仕切りなど複数枚の襖を同時に張替えるため、全体の調和と柄の連続性にも配慮した施工が求められました。

 

依頼主様はインテリアデザインにも関心が高く、事前に様々な襖紙サンプルを検討されていました。最終的に選ばれたのは伝統的な和紙素材にモダンな柄をあしらった襖紙で、隣り合う襖同士で柄がつながるデザインです。ふすま張替えによって部屋の雰囲気を一新し、お客様の理想に近づけるために、職人である私もしっかりと準備を整えて施工に臨みました。
 

作業準備と事前確認

施工当日、まずは和室周辺の養生から開始しました。床や周囲の壁、畳が作業中に汚れないようビニールシートや養生テープでしっかりと保護します。次に、今回張替える襖(押入れの引き戸4枚と部屋仕切り用2枚)の現状確認を行いました。木枠(縁)の緩みや歪みがないか、襖の開閉具合、下張りの板(芯材)の状態を丁寧に点検します。築年数40年ということもあり、襖の木枠には経年劣化による軽い緩みが見られましたが構造的な問題はなく、そのまま再利用できると判断しました。

 

襖紙の柄合わせが必要なため、各襖には取り外す前に番号と上下の印を付けておきました。こうすることで、複数枚の襖を同時に施工した後でも元の位置に正しく戻すことができ、柄の連続性を確保できます。また、作業スペースを十分確保するため、一時的に和室内の家具を移動し、襖を平置きできる作業台や毛布を準備しました。天候にも留意し、この日は梅雨時で湿度が高かったため、換気扇や扇風機を用いて室内の空気循環を確保し、糊の乾燥をコントロールする段取りも整えました。
 

ふすま張替え作業手順

作業は以下の手順で進めました。現場の状況に合わせて柔軟に対応しつつも、基本に忠実なプロの施工手順です。
 

  1. 古い襖紙の取り外し

    襖を敷居から静かに取り外し、平らな作業台に載せます。まず襖の引手(金具の取っ手)を取り外しました。引手は裏側から軽く押し出すと外れるタイプで、傷つけないよう当て木をして金槌で叩き出し、安全に取り外しました。次に既存の古い襖紙を剝がしていきます。長年貼り替えていない襖では襖紙が固着して剥がれにくいため、霧吹きで薄く水を吹きかけ紙を湿らせ、数分置いて糊を柔らかくしてから慎重に剥がしました。剥がしてみると過去の張替えで下に古い襖紙が2層残っていたため、一緒に全て除去します。木枠や芯材に古い糊や紙片が残らないよう、ヘラを使って丁寧にこそげ落としました。
     

  2. 下地の点検・補修

    襖紙を全て除去した後、露わになった襖の下地(芯材)を確認します。芯材は経年で反りや傷みが出ることがあり、今回の襖でも数カ所に小さな穴と表面の毛羽立ちが見られました。穴が開いている部分には、専用の補修紙や和紙を当てて糊で貼り、平らに補修します。

    また、表面が荒れているところは紙やすりで軽く研磨し、埃を刷毛で払いました。木枠の接合部もグラつきがないか再確認し、緩んでいた角は木工用ボンドを少量流し込んで補強しています。下地全体を平滑に整えたあと、必要に応じて下張り紙(胴張り・茶チリ紙)を貼りました。今回は古い襖紙の染みが芯材に残っており、新しい紙に透ける恐れがあったため、襖全体に薄茶色の下張り紙(茶チリ紙)を貼って下地を調整しています。

    この下張り紙は下地からのシミや模様の映り込みを防ぐだけでなく、襖全体の強度を上げる効果もあります。下張り紙を貼った後は十分に乾燥時間を取り、次の工程に備えました。
     

  3. 新しい襖紙の寸法合わせと貼り付け

    下地の準備が整ったら、新しく貼る襖紙を寸法に合わせて裁断します。今回選んだ襖紙は柄物で、4枚一組の襖に連続する模様が入るため、柄合わせが作業の要になりました。
    広い作業スペースに新しい襖紙を並べ、4枚分の柄のつながりを確認します。模様が途切れず自然に続くよう各紙の位置を微調整し、余白を含めて一枚一枚1cm程度大きめにカットしました(後で木枠に収める際の調整分として余裕を持たせます)。裁断後、襖紙の裏側に薄く均一に糊を塗ります。職人用の調合糊(でんぷん系の米糊に樹脂糊を適量加えたもの)を使用し、刷毛で端までむらなく塗布しました。糊を塗った襖紙はすぐに貼り付けず、数十秒〜1分ほど“馴染み”の時間を置きます(紙が伸縮しシワになりにくくするための工程です)。

     

    続いて襖本体に襖紙を貼り付けます。位置決めがずれないよう、木枠の端に合わせて襖紙を上辺から慎重に載せました。特に柄物の場合は最初の位置が肝心です。空気が入らないように中央から外側へ向かって「なでバケ」(刷毛)や柔らかい布で丁寧に撫でつけ、襖紙を密着させます。余分な糊や気泡はこのときにしっかりと押し出し、表面が平滑になるよう調整しました。
    4枚の襖すべてに同様に新しい襖紙を貼り、隣り合う襖同士の柄がきちんと繋がるか全体を俯瞰して確認します。模様の位置に違和感があれば、糊が乾ききる前にそっと紙を持ち上げて貼り直す微調整も行いました。このような柄合わせの調整には神経を使いますが、プロの腕の見せ所でもあります。
     

  4. 仕上げ・組み立て

    襖紙を貼り終えたら、仕上げに入ります。まず襖の四周に沿って、はみ出した余分な襖紙を鋭利なカッターで切り落としました。木枠を外している場合は、紙を枠の幅に合わせて折り込み、見えない部分でカットします。今回は木枠を一度外して施工していたため、新しい襖紙を枠の内側に折り込む形で仕上げました。次に外しておいた木枠を元の位置に取り付けます。木枠は上から順に押しはめ、ゴムハンマーで軽く叩きながらしっかり固定しました。古い木枠ですが狂いなく収まり、襖紙との境目も綺麗に納まっています。

    続いて引手金具の再取り付けです。新しい襖紙に引手の穴位置を裏から確認し、表側から小さく十字に切れ目を入れて穴を開けました。そこへ清掃しておいた既存の引手をはめ込み、裏側から当て板を当てて軽く叩き、ガタつきなく固定します。最後に襖を建具の鴨居と敷居に戻しました。複数枚の襖を元通りに立て込み、先ほど付けておいた番号と上下の印どおりに配置します。スムーズに開閉するか動作確認し、必要に応じて敷居溝のホコリを掃除したり、滑りを良くするため蝋を軽く塗布しました。全ての襖を設置し終えたところで、4枚続きの美しい柄が違和感なく繋がっていることを確認できました。工事箇所以外の養生材を撤去し、作業場を清掃して施工完了です。
     

デザインへのこだわりと現場での苦労話

今回のふすま張替えでは、お客様のデザインへのこだわりに応えるために通常以上に神経を使いました。襖紙の柄は伝統的な草花模様をモチーフにしたもので、4枚の襖にまたがって一つの大きな絵になるデザインです。柄をピタリと合わせるため、上記のように襖紙を並べて位置決めしましたが、実際の施工中にも微調整の連続でした。

 

特に苦労したのは、古い住宅ならではの建具の個体差です。築40年ともなると、襖の木枠や建具の立て付けに微妙なズレが生じており、襖ごとに高さや幅がわずかに異なる場合があります。実際に襖を戻してみると、紙を貼る前の採寸どおりに柄を合わせたはずが、建て付けの誤差で模様の線が数ミリずれる箇所がありました。そのため、再度襖を外して作業台で柄の位置を修正し直す場面もありました。予想以上に手間がかかったポイントではありますが、ここで妥協せず調整できるのが職人の強みです。

 

また、お客様から事前に「できるだけ明るい雰囲気にしたい」と伺っていたため、柄の出方にも配慮しました。例えば、大柄の花模様が襖の中央に来るよう位置決めすることで、部屋に入ったとき目に飛び込む印象が明るく華やかになるよう工夫しています。柄物の襖紙は継ぎ目でのズレが目立ちやすい反面、ピタリと合えば空間の印象を一変させる力があります。時間と手間はかかりましたが、仕上がった襖を見たときには「やはりこだわって良かった」と実感できました。

 

デザインにこだわるお客様とのお仕事では、コミュニケーションも重要な要素です。作業中、途中経過をお客様に確認いただく場面も設けました。特に柄の向きや配置について、「もう少し○○の柄を見せたい」といったご希望があれば柔軟に反映できるようにしました。職人の主観だけで進めるのではなく、お客様のイメージを共有しながら進行できたことで、信頼関係をより深めることができたと感じています。
 

職人の現場判断と工夫

実際の現場では、マニュアル通りにいかない状況も多々ありますが、経験に裏打ちされた判断と工夫で乗り越えていきます。今回の施工で職人として特に留意したポイントや工夫をご紹介します。
 

気候条件への対応:
梅雨時期の施工だったため、乾燥時間の読みが難しい状況でした。プロの職人は天候による糊の乾き具合を把握しており、この日は作業工程ごとに扇風機を活用し室内の湿気をコントロールしました。乾燥不十分で次工程に進めば仕上がりに影響するため、天気に応じたタイミング調整も職人の腕の見せ所です。
 

道具と材料の選定:
現場の状態に合わせて適切な道具と材料を選ぶことも大切です。今回は古い襖で下地がデリケートだったため、糊は強力すぎず伸びの良いでんぷん系のものを選びました。また、ヘラやカッターの刃は常に新品同様の切れ味を維持し、紙を傷めないよう細心の注意を払っています。ふすま張替え専用の道具(なでバケ、刷毛、隅押さえ用の定規等)を使いこなすことで、仕上がりに差が出ます。
 

細部へのこだわり:
柄合わせや縁の処理など細部の仕上げこそプロの腕が光る部分です。例えば、木枠と襖紙の境目に糊のはみ出しがあれば濡れ雑巾で拭き取り、指紋や汚れが付かないよう作業用手袋も適宜交換しました。引手周りは紙が裂けやすい箇所なので、切り込みの入れ方ひとつにも注意を払い、見た目に美しく耐久性の高い仕上がりを目指しています。これらの積み重ねが「職人に頼んで良かった」と思っていただける品質に繋がります。
 

作業段取りと安全管理:
複数枚の襖を扱う際は、作業の段取りと安全にも気を配っています。作業スペースに余裕を持たせ、一本ずつ確実に作業を進めることで、誤って襖紙を傷つけるリスクを減らしました。脚立の上げ下ろしや重い襖板の移動時は、相棒と声を掛け合いながらケガのないよう注意しています。職人として現場の安全と効率を両立させることも、プロの仕事として欠かせない要素です。
 

仕上がりとお客様の反応

全ての工程を終え、和室に設置された新しい襖をあらためて確認しました。4枚一組の襖に貼られた連続模様は見事に繋がり、まるで一幅の絵画のような仕上がりです。部屋全体も施工前と比べて格段に明るくなり、和紙特有の上品な風合いとモダンなデザインが調和して、和室が生まれ変わった印象を受けました。

 

施主のご依頼主様にも仕上がりを確認していただいたところ、「まるで新築みたいに部屋が明るくなりました。細かい柄まできれいに合っていて、とても満足です」と嬉しいお言葉をいただきました。特にデザイン面でのこだわりがしっかり反映されたことに大変喜んでおられ、職人冥利に尽きる瞬間です。施工前は「柄物でこんなに雰囲気が変わるとは思わなかった」とのことで、お客様の期待以上の効果を実感していただけました。

 

また、開閉の具合も調整したことで、襖の滑りが以前より滑らかになった点にも気付いてくださいました。長年使われて敷居溝に溜まっていた埃を掃除し、木枠の緩みも補修した結果、「音も立てずスーッと開くので驚いた」とのお声があり、見た目だけでなく機能面でもご満足いただけたようです。プロのふすま張替えでは見映えの向上はもちろん、こうした使い勝手の改善も得られる場合があります。

 

最後に、お客様と一緒に最終チェックとして部屋全体を見渡しました。襖だけでなく畳や壁など和室全体が調和し、居心地の良い空間になったとのことです。「これならお客様(訪問客)を迎えるのが楽しみです」と笑顔でおっしゃっていただき、私どもとしても達成感のある施工となりました。
 

ふすま張替えはプロにお任せください

今回の施工事例からもわかるように、ふすま張替えひとつで和室の雰囲気は見違えるほど良くなります。古く傷んだ襖紙を新調すれば、お部屋が明るく清潔になるだけでなく、お客様のセンスに合わせたデザインで個性を演出することも可能です。しかし一方で、襖張替えには細かな技術と現場対応力が求められます。特に柄物の襖紙や複数枚にわたる施工では、経験豊富な職人による正確な作業が仕上がりを左右します。

 

プロの業者に依頼することで、下地補修から柄合わせ、細部の仕上げまで安心して任せることができます。私たちも実際の施工を通じて、「職人だからこそできる判断や工夫」が品質の決め手になることを再認識いたしました。一般のご家庭はもちろん、旅館やホテル、民宿など多数の襖を一括して張替えたい場合にも、プロのチームであれば効率よく高水準の仕上がりを提供できます。

 

和室の美観を保ち、お客様に喜んでいただける空間作りのお手伝いをするのが私たち施工業者の喜びです。ふすま張替えをご検討中の方は、ぜひプロにご相談ください。デザインのご提案から丁寧な施工、アフターフォローまで一貫して対応いたします。職人の目線と豊富な経験で、皆様の大切なお部屋を心地よく生まれ変わらせるお手伝いをさせていただきます。プロにお任せいただければ、きっと満足のいく仕上がりを実感していただけるはずです。温かみのある和の空間づくりのパートナーとして、お役に立てれば幸いです。

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