一戸建て和室の障子張替え施工レポート ~柔らかな光を取り戻すプロの作業工程~
一戸建て住宅の和室にて、障子の張替え工事を行いました。経年劣化で障子紙が黄ばみ破れており、ご高齢のご夫婦から「和室を明るくしたい」とのご依頼です。障子は和室に柔らかな光を取り入れる重要な建具であり、室内の雰囲気を左右します。
プロの内装業者として、安全かつ丁寧な作業で和室本来の風情を蘇らせることを心がけました。本記事では、戸建て住宅での障子張替え現場をレポートし、具体的な作業工程や職人ならではの工夫ポイントをご紹介します。
障子張替え作業工程
1. 古い障子紙の除去 – 下地の点検と清掃
まず最初に、古くなった障子紙の撤去作業です。障子戸を枠ごと外し、床に養生シートを敷いて水平に寝かせて作業開始。破れやすい古紙をいきなり剥がすと木枠を傷めかねないため、霧吹きや濡れ雑巾で紙全体を湿らせました。水分がのりに浸透して紙がふやけたところで、角からゆっくり慎重に剥がします。古い紙を剥がし終えたら、桟や組子(障子の格子状の細い木枠)に残ったのりカスやホコリを丁寧に拭き取りました。
ポイント:
下地となる障子框(かまち)や組子に古いのりが残っていると新しい紙の接着不良の原因になるため、この下地処理は時間をかけて念入りに行います。今回は桟の一部にゆるみが見られたため、木工用ボンドで補強して乾燥させ、次の工程に備えました。下地を整えることで、新しい障子紙を貼った際の仕上がりに大きな差が出るのです。
2. 新しい障子紙の選定 – 耐久性と透光性のバランス
次に、新規に貼る障子紙の選定です。お客様のご希望と和室の雰囲気に合わせて、和紙と化学繊維を混抄した強化障子紙を採用しました。従来の純和紙より耐久性が高く破れにくいのが特長です。実際、近年の高品質な障子紙は通常の和紙の約5倍もの破裂強度を持つものもあり、ペットや小さなお子様がいるご家庭でも安心です。今回はご高齢のご夫婦宅ということで、「長持ちして張替え頻度を減らせるように」という思いからこの紙を提案しました。
強化タイプとはいえ紙の質感は損なわれておらず、和紙本来の優しい風合いで柔らかな光を通します。耐久性と透光性のバランスが良い障子紙を選ぶことで、和室の明るさと実用性の両方を叶えられます。
3. 新しい障子紙の貼り付け – 丁寧なのり付けと貼り合わせ
障子紙を選んだら、いよいよ貼り付け作業に入ります。まず障子框および組子全体に、専用の障子用でんぷん糊をまんべんなく塗布しました。のり刷毛(はけ)を使い、木枠にトントンと叩き込むようにして塗ります。薄く塗りすぎるとのりがすぐ乾いて紙が十分接着しないため、たっぷりめに塗ることがコツです。桟の端から端まで塗り残しがないよう注意深く作業しました。のり付けが終わったら、新しい障子紙を枠に合わせてゆっくりと貼り付けていきます。最上部の桟に紙端を仮留めし、位置がずれないよう少しずつ紙を転がすように下方へ貼りました。
貼りながら中央の組子と障子紙がズレないよう手で軽く引っ張り、ピンと張った状態を維持します。
ポイント:
組子の交差部分は空気が残りやすいので、指先で紙を押さえつけながら密着させました。万一シワやたるみが出ても、のりが乾く前であればすぐに貼り直して調整可能ですので慌てず対処します。職人としてこの貼り付け工程では最も神経を遣うところで、紙の張り具合や位置決めひとつで仕上がりの美しさが決まるため、集中して作業を進めました。
4. 仕上げ処理 – 余分な紙の裁断と霧吹きによる調整
新しい紙を貼り終えたら、仕上げの処理に入ります。まず障子枠からはみ出した余分な紙の裁断です。貼り終えた直後はのりがまだ乾ききっておらず紙がぐにゃぐにゃするため、少し時間をおいて半乾きの状態になってからカッターで切るのがポイントです。私も紙と枠の接着面を確認し、のりが程よく馴染んできた段階で裁断作業を開始しました。
定規代わりに障子の桟をあて、切れ味の良い専用カッターでゆっくりと余分な紙をカットしていきます。四隅の細かい部分は刃先を慎重に入れ、木枠を傷つけないように注意しながら処理しました。切り取った紙片が桟に残らないよう払い落とし、貼り面全体を最終チェックします。
裁断が完了したら、プロのひと工夫として霧吹きによる紙の調整を行いました。これは障子紙を美しくピンと張らせるための裏技です。のりが完全に乾いてから、障子紙全体にごく薄く均一に水を霧吹きします。紙全体を一度しっとり濡らしてから乾燥させると、和紙が乾く過程で収縮する性質を利用して紙面のシワやたるみを取ることができます。ポイントは、一ヶ所にかけすぎたりせずムラなくまんべんなく吹きかけること。
霧吹きはあくまで最後の仕上げ的な工程ですが、このひと手間で障子紙がパリッと締まり、見違えるように美しい仕上がりになりました。実際、シュッと霧を吹いた直後から紙がピンと張っていく様子が視覚的にもわかり、「よし、完璧だ」と職人として手応えを感じられる瞬間です。
5. 建具の再設置と最終調整 – スムーズな開閉の確認
障子紙の貼替え作業と仕上げが終わったら、乾燥を待って障子戸を元の鴨居と敷居に再設置します。慎重に建具をはめ込み、ゆっくりと開閉してみてスムーズに動くか確認しました。紙を張り替えると障子戸自体の歪みや建て付けの狂いが目立つこともあるため、この段階で微調整を行うのも大切です。今回は戸車(下部の滑車)の動きを点検し、僅かな高さ調整を行って開閉の引っ掛かりを解消しました。新しい障子紙が桟からはみ出していればこのとき破れてしまう恐れがありますが、裁断処理をきっちり行っていたため問題なく納まりました。
ポイント:
ご高齢の施主様でも楽に扱えるよう、スルスルと軽い力で動くか念入りにチェックしています。開閉時に障子紙が框に擦れて傷まないかも確認し、必要なら紙と接する溝部分を紙ヤスリで軽く磨くなどの調整を加えます。最終的に動作良好であることを確認し、現場の清掃をして作業完了です。
作業後の和室の変化とお客様のご感想
本作業の結果、和室には柔らかな自然光が差し込むようになり、長年失われていた明るさと風情が見事によみがえりました。 張替えたばかりの真新しい障子紙は部屋全体を明るく演出し、和紙越しの柔光が心地よい空間を作り出します。
古い障子紙特有の黄ばみや破れがなくなったことで、和室の清潔感と美しさが一段と際立ちました。お客様にも仕上がりをご確認いただいたところ、「部屋の印象が大きく改善し、新築当時のように明るくなった」と大変喜んでいただけました。ご高齢のご夫婦にも「これで安心してお正月を迎えられるわ」と笑顔でお言葉をいただき、職人冥利に尽きる思いです。
毎日の暮らしの中でふと目に入る障子が綺麗になるだけで、お住まい全体の印象もアップし、心も明るくなります。長年使った障子でもプロが丁寧に張替えれば見違えるほど綺麗になりますので、障子張替えをお考えの方はぜひ専門業者にご相談ください。
戸建て和室の小さなリフォームであっても、住まい手の生活の質を大きく向上させることを現場で実感した施工事例となりました。