ドアのへこみ補修事例(東京都内の一般住宅)
築15年の東京都内の戸建住宅で、リビングドアに生じたへこみの補修工事を行いました。木製ドアで塗装仕上げのため、素材と塗装に適した補修方法を慎重に選択しました。以下、現場を担当した職人の目線で、作業の詳細とポイントをご報告いたします。
1. 現場調査と準備
まず現場にてドアの損傷状態を細かく確認しました。へこみの深さと範囲を把握したうえで、今回は木製ドアの塗装面に対応できる補修キットを選定し、必要な工具も全て準備しました。経験上、どんな補修方法・材料を選ぶかが仕上がりを左右します。特にドアの素材に合ったものを使うことが重要なので、この段階で慎重に検討しました。
2. 作業エリアの確保
作業によってご自宅の家具や床を傷つけないよう、作業エリアの養生をしっかり行いました。具体的には、以下の対策を講じました。
- ドア周辺にビニールシートを敷き、養生テープでしっかり固定しました。
- 粉塵が周囲に飛散しないよう、作業エリアを簡易的に囲い込みました。
このように周囲への塗料や粉塵の飛散を防ぐことで、お客様の大切なお宅を汚さないよう徹底しました。
3. へこみの修正
へこみは中程度で、ドアを丸ごと交換するほどではなかったため、充填剤(木工用パテ)を使った補修で対応しました。具体的には、以下の手順で作業を行いました。
- まず、へこんだ部分に直径数ミリの小さな穴を開け、そこから木工用パテを丁寧に注入しました。この穴を通してパテを内部にまで行き渡らせることで、表面だけでなく奥からへこみを押し戻す狙いがあります。
- へこみ部分が周囲と同じ高さになるまでパテを充填し、少し盛り上がる程度に余分に入れてから自然乾燥させました。パテは乾燥すると少し縮むため、あえて盛り気味に入れておくことで、硬化後にちょうど平らになります。
- パテが十分に硬化した後、サンドペーパーで盛り上がった部分を周囲と面一(つらいち)になるまで研磨し、表面を平滑に整えました。研磨の際は、指先で触って微妙な段差が残っていないか確認しながら仕上げました。
4. 表面処理
表面のへこみを修正した箇所はもちろん、ドア全体の塗装面も事前に整えておきます。具体的には、以下の作業を行いました。
- パテで形を整えた部分を含め、ドア表面全体を極細目のサンドペーパーで優しく研磨し、塗装前の下地を滑らかに整えました。
- 研磨後、表面に残った埃を丁寧に拭き取り、塗料がしっかり密着するように下地を清潔にしました。
下地処理を丁寧に行うことで、塗装後の仕上がりに大きな差が出ます。細かな傷や埃を残さないよう徹底し、ムラのない美しい塗装面になるよう心掛けました。
5. 色合わせ
塗装に入る前に、既存のドアの色に新しい塗料を合わせる色合わせの作業を行いました。次の手順で進めました。
- 補修箇所に下地処理剤(プライマー)を塗布し、新しい塗料がしっかり密着する下地を作りました。
- ドアの既存塗装に合わせて塗料を調色しました。微妙な色味の違いも仕上がりに影響するため、少しずつ色を混ぜながら慎重に調整しました。
- 細めの刷毛を使って、調色した塗料を補修箇所に薄く均一に塗布しました。
色合わせは補修作業の中でも特に神経を使う工程です。日中の自然光の下でも違和感がないよう、塗料の濃淡を微調整しながら塗装しました。
6. 仕上げ塗装
色合わせした塗料で補修箇所の塗装ができたら、仕上げとして塗装全体を整えました。具体的な手順は以下のとおりです。
- 調整した塗料を補修箇所全体にムラなく塗布し、周囲の既存塗装との境目がわからないよう丁寧に塗り広げました。
- 乾燥後、塗りムラや色が薄い部分が見られたため、同じ塗料をもう一度塗り重ねて色を均一に整えました。
- 最後に、ドア全体に薄くクリア塗装を施し、新旧の塗膜の光沢感が均一になるよう仕上げました。
クリア塗装を全体にかけることで、新しく塗った部分と既存部分の艶の差をなくす効果があります。こうした一手間を加えることで、補修跡がほとんどわからない自然な仕上がりになりました。
7. 乾燥と最終確認
塗装完了後は、仕上がった塗膜をしっかり乾燥させます。十分に時間を置き、塗料が完全に硬化したことを確認してから最終チェックを行いました。
- 補修箇所の色味や質感が周囲の既存塗装と違和感なく馴染んでいるか、さまざまな角度から目視で確認しました。
- 塗料が完全に乾いていることを確認してから、ドアの開閉テストも実施し、補修によって動きに支障が出ないか確かめました。
扉の塗装面は、乾燥が不十分な状態で触れると他の部材と貼り付いてしまうことがあります。そのため、十分に乾燥時間を取ってから最終確認を行うことが大切です。
8. 清掃と引き渡し
全ての作業が完了した後、現場の清掃とお引き渡しを行いました。
- 作業後、養生材を全て撤去し、床や家具周辺にホコリ一つ残さないよう丁寧に清掃しました。
- お客様に補修箇所をご確認いただき、今回の作業内容をご説明するとともに、ドアを長持ちさせるための今後のメンテナンス方法についてアドバイスさせていただきました。
職人として、施工箇所だけでなく周辺環境も含めてきれいにしてからお引き渡しすることを常に心掛けています。最終チェックと清掃を終え、お客様にも安心して仕上がりを見ていただくことができました。
補修後の仕上がりとお客様の声
今回の補修によって、ドアは新品同様の見栄えを取り戻し、室内全体の印象も明るくなりました。お客様にも仕上がりに大変満足していただき、「さすがプロの技術ですね」「どこを直したのか全然わからない!」と嬉しいお言葉を頂戴しました。
私自身も、ドアのへこみ補修では素材や仕上げに合った方法選びがいかに重要かを改めて実感しています。今回の現場経験を糧に、今後もさらに技術を磨き、お客様により一層ご満足いただける補修サービスを提供していきたいと思います。