キッチンカウンター修理事例:築10年の人工大理石カウンターのひび割れ補修施工報告

キッチンカウンター修理事例:築10年の人工大理石カウンターのひび割れ補修施工報告

 

1. 現場調査と準備

現地調査の結果、ひび割れはカウンターの中央付近に長さ15cmほどの線状に走っていました。幸い、ひびは表面のみで構造には影響ないと判断されましたが、見た目に目立つため早急な対応が必要です。私はまずお客様にキッチンカウンターの現状と補修方針をご説明しました。

 

ひび割れ部分だけを樹脂で埋める方法もありますが、人工大理石カウンターの補修では仕上がりの美観を重視したいところです。そのため、今回はカウンターの同素材(人工大理石)の板材を用いた「埋め木」での修復プランをご提案しました。この方法なら、色柄も完全に近い形で復元でき、補修跡がほとんど分からなくなるからです。お客様も「目立たなく直るなら安心しました」と仰り、工法の妥当性に納得いただけました。

 

補修に先立ち、必要な材料と工具を入念に準備します。人工大理石 補修専用の接着剤や補修用材料は、現場でスムーズに作業を進めるために事前に手配しました。以下は今回使用した主な資材・機材です。
 

  • 同素材の人工大理石板(補修用の友材)
     
  • 人工大理石用の専用接着剤(2液混合タイプ、模様に合わせたカラー)
     
  • 電動トリマー(溝を切削するルーター)
     
  • 紙やすり各種(#240〜#600程度)とポリッシャー(電動研磨機)
     
  • マスキングテープ、養生シート(周辺を保護する養生用)

     

職人として現場に赴く際は、「段取り八分」と言われるように準備が肝心です。材料の色味や硬化時間も事前に確認し、万全の態勢で作業に臨みました。
 

2. 養生と清掃

作業に入る前に、キッチン周りの養生と清掃を徹底します。カウンター周辺の床やシンク、壁面が補修作業で汚れないよう、ビニールシートやマスキングテープでしっかり保護しました。特に人工大理石の粉塵は細かく舞いやすいので、周囲の家具や調理器具にもカバーをかけ、後片付けの手間を最小限に抑えます。また、作業者自身も防塵マスクや保護メガネを着用し、安全と衛生に配慮しました。

 

次に、ひび割れ部分の清掃を行います。表面の汚れや油分を中性洗剤とぬるま湯で洗い落とし、しっかり乾燥させました。汚れが残っていると接着剤の密着力が弱まるため、この清掃工程は手を抜けません。さらに、ひびの内部に潜む微細なホコリもエアダスターで吹き飛ばし、補修個所を万全な状態に整えます。下準備を丁寧に行うことで、この後の補修作業の仕上がりに大きな差が出るのです。
 

3. 補修作業(くり抜き・接着・養生)

いよいよ人工大理石カウンターのひび割れ補修作業に入ります。まずひび割れに沿って電動トリマーで浅い溝を丁寧に切削しました。ひびをそのまま埋めるだけではなく、あえて一直線の溝に加工し直すことで、補修材を確実に定着させ、仕上がりを真っ直ぐ綺麗に見せる狙いがあります。トリマーの刃先は回転速度が高いため、焦げたり溶けたりしないよう一気に削らず慎重に操作しました。作業中、職人の感覚として材料の硬さや削り粉の様子から「このカウンターはアクリル系人工大理石だな」と判断できました。アクリル系は加工しやすく、補修材との相性も良いので施工しやすい印象です。

 

次に、同じ人工大理石素材から作製した「埋め木」(友材)を溝に合わせて準備します。今回は運よくメーカーから取り寄せた同柄のサンプル板があったため、それを使ってピッタリの寸法にカットしました。ポイントは、埋め木の片面をわずかにテーパー(斜め)状にカットすることです。上面から見た時に接合ラインが目立たないようにする狙いで、職人の経験上このひと手間が仕上がりを左右します。現場でも何度か仮合わせを行い、溝に違和感なく収まるか微調整しました。

 

埋め木の準備が整ったら、いよいよ接着工程です。2液混合型の専用接着剤を指示通りに調合し、溝の内部にむら無く塗布します。人工大理石カウンター用の接着剤には、元の天板と同じ模様に見えるよう微細な粒子が含まれているものを選びました。接着剤自体が色柄合わせの役割を果たすため、これにより継ぎ目がさらに分かりにくくなります。

 

溝全体にたっぷり接着剤を行き渡らせたら、用意した埋め木を慎重にはめ込みました。指先の感触に集中しながら押し込み、余分な接着剤が僅かににじみ出す程度に密着させます。はみ出した接着剤は硬化前にヘラで軽く取り除き、表面をできるだけ平滑に整えておきました。

 

接着後は、十分な硬化時間を確保するために養生期間を置きます。急いでも接着剤が完全に固まらなければ意味がないので、この現場では約2時間ほど硬化を待ちました。夏場で気温が高い日でしたが、直射日光を避けて風通しを良くし、安定した環境で硬化させます。硬化中、私は別の工具の後片付けや次工程の研磨段取りを進めつつも、接合部がズレていないか何度か確認しました。プロの職人にとって、仕上がりを左右する大事な時間です。

 

4. 仕上げ(研磨・ポリッシュ)

接着剤が硬化したのを確認後、仕上げの研磨作業に移ります。埋め木はわずかに天板表面より出っ張った状態になっているため、まずはノコギリやカンナで余分な部分を大まかに除去しました。続いて電動サンダーに粒度の荒い研磨紙(#240相当)を装着し、埋め木部分を中心に平滑になるまで削っていきます。人工大理石は比較的研磨しやすい素材ですが、周囲の既存面と段差なく一体化させるよう慎重に研ぎ合わせました。#240での削り粉が出なくなったところで、今度は#400→#600と番手を上げて表面を滑らかに整えます。研磨作業は単調に見えますが、私は常に指先で触って段差やザラつきがないか確認しながら進めました。職人として「もう大丈夫かな?」と思っても、念には念を入れてもう一段階細かい番手で磨き上げます。

 

最後にポリッシャーで軽く全体をポリッシングして光沢を整えました。といっても新品のようにギラギラ光らせる必要はなく、既存のカウンターと同程度の落ち着いた半ツヤに仕上げます。人工大理石カウンターは新品時はマット調(半光沢)仕上げのものが多いため、部分補修箇所だけが不自然にテカテカしないようツヤ加減にも気を遣いました。水を一滴垂らしてみると、補修部と周囲で染み込み方に差がないことも確認できました。補修痕がどこかわからない仕上がりに、お客様に見せるのが楽しみになる瞬間です。
 

5. 効果確認と引き渡し

補修後、キッチンカウンター全体を改めて点検します。遠目に見ても補修跡はほとんど分からず、近くで凝視してようやく「言われてみればここかな?」とわかる程度で、お客様も驚かれていました。色も模様も継ぎ目で途切れることなく繋がっており、プロの目から見ても自然な仕上がりです。人工大理石カウンターは継ぎ目のない一枚物が売りですが、適切な補修を行えば一体成型のような美しさを取り戻せることを改めて実感しました。

 

周辺に施していた養生シートやテープをすべて撤去し、施工箇所を中心に清掃を行って作業完了です。シンク内や床にも粉塵や接着剤の飛散がないよう最終確認し、元のキッチンよりも綺麗なくらいに拭き上げました。お客様に仕上がりをご覧いただいたところ、「どこを直したのかわからない!」と大変ご満足いただき、職人冥利に尽きる瞬間です。私自身もホッとすると同時に、この達成感があるからこそ補修の仕事はやめられないと感じました。

 

最後に、お客様には今回の補修箇所が長持ちするよう取り扱い上の注意点もお伝えしました。キッチンカウンター(天板)は今後も長く使うものなので、ちょっとした心掛けで再発リスクを減らせます。以下のポイントを説明し、安心してお使いいただけるようにしています。

 

過度な熱や衝撃を避ける: 
熱い鍋を直接人工大理石カウンターに置かないでください。急激な温度変化はひび割れの原因になります。また、重い調理器具を落としたり叩いたりしないようご注意ください。

日常のお手入れ: 
汚れは早めに中性洗剤で拭き取る程度で十分です。硬いタワシや研磨剤入りのクリーナーは表面を傷つける恐れがあるため避けてください。普段から優しく扱うことで、カウンターの美しさが長持ちします。
 

異変があれば早めに相談: 
万一またひび割れや欠けを見つけた場合は、早めに専門の業者にご相談ください。小さな傷でも放置すると広がる可能性があるため、早期の補修対応が安心です。


以上で施工完了となります。今回のケースでは、キッチンカウンターの修理が無事成功し、カウンターを交換せずに済みました。人工大理石の補修は高度な技術を要しますが、プロに依頼することで新品同様の状態まで復元できます。お客様の笑顔を見て、私たち施工者一同も大きなやりがいを感じました。「キッチンカウンター 修理」や「人工大理石 補修」を検討されている皆様も、本事例を参考にしていただければ幸いです。

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