特別養護老人ホームのグリストラップ清掃作業報告

埼玉県の特別養護老人ホームのグリストラップ清掃作業報告

埼玉県内のある特別養護老人ホームにて、厨房排水のグリストラップ清掃(油脂分離槽、グリーストラップとも呼ばれる設備の清掃)を実施しました。

本記事では、介護施設の現場目線から、グリストラップの点検内容や清掃手順、使用機材、そして作業中に気づいたポイントを詳しくレポートします。

施設長や管理者の方々にとって、厨房の衛生管理と設備維持に役立つ実践的な事例となれば幸いです。

現場の状況と清掃の目的

今回清掃を行ったのは、特別養護老人ホームの屋外に埋設された深さ約2mのグリストラップ(油脂分離槽、グリーストラップとも呼ばれる)です。

厨房からの排水に含まれる油脂や生ゴミを捕捉する設備ですが、定期的に清掃しないと悪臭や害虫(チョウバエなど)の発生、排水管の詰まり等の原因となります。

特に高齢者施設では衛生環境が重要であり、入居者の健康を守るためにもグリストラップの適切な維持管理が欠かせません。

清掃の目的は、溜まった油脂汚れや沈殿物(スカム)を除去し、設備を正常な状態に戻すことです。

また、今回の点検では槽本体の歪みなど構造上の問題も見られたため、安全に維持管理できるよう早急な対応が求められていました。

点検結果と発見された問題点

まず作業開始前にグリストラップの各部を点検したところ、以下の状況が確認できました。

  • 蓋(フタ):異常なし
    開閉に問題なく、密閉性も保たれていました。

  • し渣カゴ(排水口のゴミ受けバスケット):目詰まり
    生ゴミのカスが網に詰まった状態で、取り外し作業時にチェーンが片側外れるほど劣化が見られました。

  • 仕切り板:異常なし
    損傷やズレはありませんでしたが、油脂の付着が厚く、取り出しには注意が必要でした。

  • 臭気トラップ管(封水装置):異常なし
    水がしっかり溜まり、臭気漏れはありませんでした。

  • グリストラップ本体:異常あり
    地中に埋設されているため、長年の土圧で本体が歪んでいることが判明しました。
    これにより仕切り板やカゴの出し入れが困難になっており、清掃作業や今後のメンテナンスに支障をきたす恐れがあります。

  • 内部の汚泥・油脂(スカム):異常あり
    水面には厚い油脂の層が浮き、大量の汚れが底にも沈殿していました。
    壁面や配管にも油脂が固着しており、一部で排水の流れを妨げている状況です。

  • 配管(流入管・放流管):異常あり
    排水の流入口および放流口付近にゴミや油脂の塊が溜まり、流れが悪くなっていました。

  • 害虫の発生:異常あり
    グリストラップ内部で小さな飛翔虫(チョウバエ)の発生を確認しました。
    堆積した汚泥を餌に繁殖する害虫で、不衛生な環境のサインです。

  • 臭気:蓋を閉めている限り異常なし
    蓋を開けると油脂臭がありましたが、閉じている状態では施設内に臭気が漏れることはありませんでした。

以上の点検結果から、油脂の大量蓄積と設備本体の歪みという二つの大きな問題が浮かび上がりました。

特に本体の歪みは、清掃の度に仕切り板やカゴの脱着が困難になるだけでなく、最悪の場合グリストラップ自体の破損につながる可能性があります。

また、汚れの蓄積によって害虫も発生しており、衛生管理上早急な対処が必要な状態でした。

使用した機材と清掃の手順

作業員2名でチームを組み、安全に配慮しながら清掃を実施しました。

深さ2mの槽内での作業となるため、転落防止や有毒ガス(硫化水素等)への注意が必要です。現場では以下の機材と手順で進めました。

  1. 防護装備の着用
    作業開始前に長靴、防水エプロン、厚手のゴム手袋、保護メガネ、マスクを着用しました。
    悪臭や汚泥との接触に備えるだけでなく、硫化水素ガスが発生している可能性も考慮し、安全第一で準備を整えます。

  2. 残水・油の除去
    まずグリストラップ内の汚水をポンプで排出し、内部を見渡せる状態にしました。
    表面に浮いている厚い油脂(オイルボール)の層は業務用バキューム(吸引機)で丁寧に吸い取り、槽外の回収容器へ移します。

  3. し渣カゴの取り外しと清掃
    排水口のゴミ受けカゴを慎重に取り外しました。
    この際、経年劣化でチェーンが片方外れてしまいましたが、無理な力はかけずゆっくりと引き上げています。
    取り出したカゴは高圧洗浄機の水圧とブラシで洗浄し、詰まっていたゴミや油かすを完全に除去しました。

  4. 壁面と仕切り板の洗浄
    槽の内壁や仕切り板に厚く付着した油脂汚れに対しては、デッキブラシやヘラを使って物理的にこそげ落としました。
    頑固な汚れには環境対応型の洗剤を軽く吹き付けて浸透させ、再度ブラシで擦ることで剥離させています。
    高圧洗浄機からの水を壁面全体にかけながら、浮き上がった汚れを洗い流しました。

  5. 底部の汚泥除去
    槽の底に堆積した固形化した油脂や泥は、長尺のスクレーパー(ヘラ状の道具)で掻き集めました。
    その後、バキュームで残さず吸引し、バケツリレー方式で地上へ汚泥を搬出します。
    深い槽内での作業なので、吸引ノズルを延長し底まで確実に届くよう工夫しました。

  6. 配管のチェックと洗浄
    流入管と放流管の詰まりも確認できたため、棒状のブラシを配管内に挿入して異物を掻き出しました。
    また、高圧洗浄機で配管内に直接水を通し、こびり付いた油脂を押し流しています。
    これにより排水の流れがスムーズになったことを確認しました。

  7. 組み戻しと動作確認
    清掃後、取り外した仕切り板とし渣カゴを元の位置に戻します。
    歪みの影響で多少手間取りましたが、慎重に角度を調整しながら収めました。
    最後に清掃したグリストラップ内に清潔な水を張り、正常に油脂が分離される状態を再現します。
    蓋を閉め、開閉に問題がないこと・臭気が外に漏れないことも確認しました。

短時間(作業時間は約1時間ほど)での清掃でしたが、効率よく進めるために2名で役割分担を行いました。

1名が汚泥の掻き出しと吸引操作を担当し、もう1名が水圧洗浄と機材準備・後片付けを担当することで、無駄のない流れで作業を完了しています。

作業中に注意した点と現場ならではの工夫

今回の清掃作業では、プロの業者ならではの工夫や現場での気づきがいくつかありました。

  • 安全対策
    槽が深いため、作業時は常に足元と周囲に注意を払いながら進めました。
    梯子(はしご)を使用する際はしっかり固定し、昇降時は2名のうち1名が必ず支えるようにしています。
    また、槽内は密閉空間ではありませんが、汚泥の分解で発生する硫化水素ガスが溜まる恐れもあります。
    作業前に蓋を開けて換気時間を確保し、ガス臭に注意を払いつつ作業しました。
    幸い体に影響が出るようなガス濃度ではありませんでしたが、「臭いを感じなくても存在している」という意識で臨んでいます。

  • 老朽化した設備への配慮
    グリストラップ本体が歪んでいるため、無理な力を加えると更なる損傷に繋がりかねません。
    仕切り板やカゴを取り扱う際は、角度を変えてゆっくりと動かし、固着している部分は焦らず汚れを落としてから外すようにしました。
    チェーンが外れた際も、「やはり経年劣化で金属部が錆びて脆くなっていたか」と納得です。
    現場では驚きよりも「こうした事態もあり得る」と想定し、予備のチェーンや工具を持参していたため落ち着いて対応できました。

  • 汚泥の臭いと拡散防止
    油脂が大量に溜まった槽内は強い臭気を発します。
    周囲の利用者(高齢者)に不快な思いをさせないよう、作業車を近くに停めて回収容器の蓋を即座に閉める、消臭スプレーを周囲に散布するといった配慮も行っています。
    また、作業時間を昼下がり(利用者が食堂に集まらない時間帯)に設定し、臭気や騒音の影響を最小限に抑える工夫も凝らしました。

  • 環境への配慮
    洗浄に使用した水や回収した汚泥をそのまま下水道に流すことはできません。
    産業廃棄物として適切に処理するため、密閉容器に入れて持ち帰りました。
    清掃後には、周囲に汚水が飛び散っていないか最終確認し、施設の敷地を汚さないよう徹底しています。

これらの注意点を守ることで、施設に迷惑をかけず安全かつ確実に清掃を完了することができました。
現場の状況に応じて柔軟に対応することが、プロの清掃業者としての腕の見せ所でもあります。

清掃後の状態と今後の提案

清掃作業の結果、グリストラップ内部は油脂汚れのない清潔な状態になりました。

詰まりかけていた配管も洗浄によって正常に流れるようになり、臭気も大幅に軽減されています。

害虫の発生源であった汚泥も除去したため、チョウバエが飛び回ることもなくなりました。

しかし、根本的な課題として残るのが本体の歪みです。
今回の清掃でも実感したように、歪んだ槽は内部部品の脱着を難しくし、清掃効率を落とすだけでなく設備の寿命にも影響します。
施設の設備管理者としては、近い将来グリストラップ本体の補修工事や交換を検討されることを強くお勧めします。
特に土圧に耐えられる強度のある材質や設置方法への改善が望ましいでしょう。

また、油脂の堆積を防ぎ衛生環境を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
一般的な目安として、厨房の規模や利用頻度にもよりますが、1~2ヶ月に一度は専門業者によるグリストラップ清掃を実施することが理想です。
定期清掃により、今回のように油脂が固着してしまう前に除去でき、悪臭や害虫の発生も予防できます。
なにより、日々の厨房業務を安心して行える環境を整えることが、介護施設利用者の安全・快適につながります。

さらに、施設スタッフによる簡易点検・清掃も併せて行うと良いでしょう。
例えば毎日の終業時にカゴ内のゴミを捨てる、週に一度表面の油をすくい取るなどの対応でも、汚れの蓄積スピードを抑える効果があります。
ただし、今回のケースのように槽が深かったり大型の場合、無理にスタッフだけで清掃しようとすると転落や有毒ガス曝露といった危険も伴います。
安全面を考慮し、手に負えない部分は無理をせず我々のようなプロに任せていただくことが肝心です。

まとめ

本記事では、特別養護老人ホームにおけるグリストラップ清掃の工程と現場状況について詳しく解説しました。

プロの清掃業者ならではの視点で、点検結果の分析から清掃手順、安全対策、そして清掃後の提案までを紹介しています。

介護施設のように長期間にわたり厨房を利用する現場では、グリストラップ内に油脂が蓄積しやすく、放置すれば悪臭・害虫・排水トラブルの原因となります。

本事例から学べるように、定期的な清掃と設備点検は施設の衛生環境維持に欠かせません。

また、老朽化による設備不良(今回でいえば槽本体の歪み)は早期に発見し対処することで、大きな事故や衛生問題を防ぐことができます。

現場を担当した私たち清掃スタッフも、今回の作業を通じて改めて定期清掃の重要性と老朽化設備への早期対応の大切さを実感しました。

施設長をはじめ管理者の方々には、本記事の内容が現場改善のヒントになれば幸いです。

プロのノウハウを活かした清掃によって厨房環境を整え、安全で安心できる介護サービスの提供に繋げていきましょう。

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